家電量販店は安売りしないのではなく、出来なくなった|選択的流通の話

当サイトで「家電量販店が安売りしなくなって来た」と書いたのは2015年のことですが、「家電量販店が近くで安売りするからお客が流れちゃって」と言うのも今は昔の感があります。何故ならチラシや店頭表示価格でもう随分と前から安い値付けをしなくなって来ているからです。

 

これは各所で言われている消費マインドの変化もありますが、もう一つ政策的な変化があります。それは2015年に独占禁止法のガイドラインが一部改正されたこと。特に影響が大きいのは「選択的流通」と呼ぶ制度が導入されたことです。これについては 2014年6月14日付の日経新聞の記事「メーカー、戦略で小売り選択 公取委が独禁法指針改定へ」に詳しいです。

 

安売りをしないのではなく、出来なくさせた「選択的流通」の影響

最大の柱は「選択的流通」と呼ぶ制度を導入すること。いまはメーカーが複数の流通業者と取引していると、正当な理由がなければ特定の業者を排除できない。ただ、どんな場合が「正当」なのか明確でない。法律違反を恐れる企業はすべての流通業者と取引する。今後はメーカーが一定の条件を設け、特定の卸や小売りとだけ取引しやすくなる。(上記記事より引用)

 

独占禁止法は小売に比べメーカーが強大な時代に作られた法律のため、メーカー側にあまりに不利な取引であっても、それを避けようとすると独禁法違反に問われる可能性がありました。この改正でこの指針に見直しが入り、過度な安売りや転売などする業者を避けることが国から容認されたわけです。家電量販店が全面的に安い値付けが出来なくなったり、携帯電話会社の実質0円にメスが入ったのもその影響と云われています。肝心のメーカーが倒れてしまっては元も子も無いので、バランスを取ろうという訳ですね。

 

ビジネスですから安くする場面は今でもありますけど、表立っては行われにくくなり、安売りをしないのではなく、非常にやりにくくなりました。その分、付加価値を高める方向に舵が切られたわけで、私たち地域店のような付加価値商売にとっては相性が良くなったと言えます。

 

難しい話はさて置くと、個々のお店は以前のように量販店の動向を気にしなくても、自店の仕事とその仕事の価値を伝えて行くことに徹すること。

 

時代の変わり目でもあり、厳しいことも多々ありますが、自分たちの商売がやり易い方向に風向きが良くなった部分を感じて、前に進んで行きたいですよね。

このブログを書いた人

メオマサユキ

(株)アトムチェーン本部 店舗運営部長。「アトムのメオマサさん」で長く公式アメブロ「町の電器屋さんの小さな販促実践委員会」を担当。㈱アトムチェーン本部入社後、経理、法務、 加盟店相談、店舗開発、物流部長を経て、2023年3月より現職。